それから数日が経った。
稽古は順調に進み、アクアの余震は今はなく、
静けさが戻りつつあった。
このまま何もなく時間が過ぎてくれることを願うだけだった。

その願いは神様に届いた。
公演まであと三日にまでこぎつけた。
ここにきて明らかに無理がたたったようなことが気になり始めた。
紅愛と智恵理の声が少しかれ始めてきた。
痛くはないというが休養をとると篝は言った。
その夜、今度は篝が高熱を発した。
体温計の数値がみるみる上がった。
40度3分驚異的な数値だ。
話には聞いたことはあるが実際見たのは初めてだった。
篝のお母さんは、
「大丈夫よ。明日にはけろっとして学校に行くから」
と能天気な発言をしていた。
それを信じて一旦は家に帰ったがやはり心配になり、戻ってきた。
「今日は側に居るから」
熱にうなされている篝の手を握っていた。
今出来ることはこれくらいしかなかった。
紗綾が心配してテレパシーを送ってきた。
(大丈夫?)
(何か特別なことでも起きたの?)
(今度は違うよ。普通に熱が出たみたい)
(アクアは大丈夫かな)
(多分大丈夫だよ)
(あと3分したら紅愛ちゃんから電話が来るから聞いてみたら)
(わかった)
それから2分ちょっとして紅愛から電話が来た。
紗綾とは連絡はとってないという。
紗綾は何者なんだろう。と、疑問が、また浮かんだ。
「アクアはどう?」
「大丈夫みたい。高熱が原因で何か特別なことは起こってないから」
ホッと一安心だ。
「陽子さんも無理をしないでね」
紅愛が優しい言葉をかけてくれた。
あとは明日までに篝の熱が下がればそれで舞台を迎えられる。
こまめにタオルを交換する。
時計を見た。
午前3時を少しまわっていた。
篝の呼吸が楽になったように感じた。
じっと篝の顔を見た。
確かに、荒い呼吸から落ち着いた呼吸になってきている。
ほっとする。
眠気が一気に襲ってきた。
もう篝は大丈夫だ。
意識が少しずつ遠のいていく。




つづく