あれから一時間が過ぎようとしていた。
篝はあいかわらずタオルを額にのせたまま寝ていた。
紗綾も紅愛も智恵理も考え尽くしたのか、
それぞれ横になって寝息をたてていた。
部屋の明かりを消し、窓辺に立つと真っ暗な海がある。
たまに白い波が見える程度であとは波の音しか聞こえなかった。
みんなと違ってなぜか寝付かれなかった。
何かの気配に気づき振り向くと、篝が立っていた。
「うわあ〜」
「そんなに驚かなくてもいいじゃない」
「急に立ってるんだもん。びっくりするの、当たり前じゃない」
「えへへ」
屈託のない笑顔がそこにあった。
篝は、そばにあった水を一気に飲み干した。
「で、どうすんの?」
思い切って聞いてみた。
「やるよ」
あっさり答えた。
「もう、構想はできてる。さっき、寝ている間に考えた」
「ほう」
篝にしてはめずらしいことだ。
演劇部に関してはそうとう前向きに
とらえているんだということがわかった。
「どうすんの?」
「この旅行から帰ったら発表する」
いつのまにか、みんなが篝の話を聞いていた。
次の日から帰るまで、目いっぱい遊んだし
観光をしてクタクタになって東京に戻った。





つづく