結局、それから三時間おばあちゃんの家いやお屋敷にいた。
智恵理、紅愛、紗綾そして私はホッとしていた。
幻のページはコピーしてもらい、私のカバンの中に入っている。
そういえば、篝が急に黙ってしまっている。
やはり最後におばあちゃんに言われたことを考えているのだろうか。
「この舞台は、私たちにとってはとても大事なものです。
大切な宝物なんです。それだけは覚えておいてください」
「はい。分かりかした」
あの時、篝は元気よく返事をしていた。
ホテルに着くなり、篝は露天風呂に直行した。
湯船に浸かりながら篝は景色をじっと見ていた。
「何考えているんだろうね」
紅愛が心配していた。
紗綾を見たが、教えてくれなかった。
基本的に紗綾は私の心しか覗かないみたいだ。
それにしても、このままだったらのぼせてしまうと思い篝に声をかけてみる。
「篝!」
返事がない。
「篝!」
言いながら近づいてみると、完全にのぼせていた。
慌てて湯船から引っ張り出した。
「ごめんね」
「のぼせるまで入ってるんじゃないわよ」
「そんなつもりは無かったんだけど・・・・」
篝は、紅愛が持ってきてくれた水を一気に飲み干した。
篝の全身は赤く火照っていた。
部屋に連れて戻り寝かせた。
氷水で濡らしたタオルを額に乗せてあげると、
「冷たくて気持ちいい」
と言っていた。

幻のページを眺めていた。
誰も話さなくなっていた。
新しい台本はそれで成立していたから、このページを差し込んでやるには、内容変更をしなくてはならなかった。
頭から台本を読み返しみる。
一度、二度、三度と読み返してみた。
良い案は浮かばない。
あとは篝がどう考えているか、それを聞くしかなかった。
みんな、篝を見た。
額にタオルをのせている篝はじっとしていた。全く動く気配すらなかった。
外は風が強くなっていた。
紅愛は愛葵と連絡をとっていた。
篝に台本を見せたときからアクアでの地震は収まっていた。だが、また余震が起こり始めているらしかった。
篝の気持ちがゆれているからだろうか。




つづく