そのとき、おばあちゃんが口を開いた。
「そうですか?なにか参考になりましたか?」
「・・・・・」
だれも話せなかった。
「これは、初演の時の台本です。
まだ、女性だけで演劇をするのに偏見が残っていた時代です」
その言葉のひとつ、ひとつが心の中に染み渡っていくような感覚を感じていた。
「これは、どなたがお書きになったのですか?」
(そうか、篝は誰が書いたか知らなかったんだ)
私は随分前に智恵理から聞いていたので不思議に思っていなかった。
しかし、それにしても篝が、普段見せない丁寧な言葉で
話しているのを聞いていると、やれば出来る子なんだ、と改めて思う。
「私の・・・・大事な、大事な親友です・・・」
おばあちゃんは遠い昔を思い出すように、目線をそらした。
その表情は穏やかだった。
それから、おばあちゃんの昔話を聞いた。
疑問に思う。
なぜ、このページだけがなくなってしまっていたのか?
誰の仕業なのか?
いつから無くなってしまったのか?
疑問に思うことが多々ある。
しかし、今考えても解決はできない。
紅愛の携帯が鳴った。
それは、愛葵からだった。
その表情からして、良いことだったみたいだ。
ホッとした笑顔の紅愛がいた。
紅愛を見ていた私に、小さくVサインをだした。
たぶん、アクアに良いことがあったんだろうと思った。
その間も篝は、おばあちゃんの話をじっと聞いていた。




つづく