もう一度呼んでみた。
「・・・なに?」
答えてくれた。それでも、目線は外さず、外を見ている。
「何、見てるの?」
「外」
「それは分かってるけど・・・・」
「・・・・」
これ以上、何も言えなくなった。
篝を見た。
大の字なって寝ている。その横で紅愛がお腹を擦っている。
相当食べた証拠だ。紗綾が携帯でみんなの写真を撮っていた。
中々良いショットだ。
そんなことを言っている場合じゃない。
一種のどかな雰囲気を智恵理のちょっとした悲鳴が壊した。
外を見ると一台の車がこちらに向かってきていた。
黒塗りの、いかにも高そうな高級車だ。
あれは日本車?なんてことはどうでもいい。
智恵理がみんなの方に向き直った。そして、ニコッと笑った。
それに気づいたのは紗綾と私だけだ。
紅愛はお腹を擦っていた。
そして、お店の扉が開き、ひとりのおばあちゃんが入ってきた。
真っ直ぐにこちらに向かってきた。
おばあちゃんにしてはしっかりとした足取りだ。
元気という言葉が似合う人だった。
「こんにちは」
優しい笑顔だ。皺がいっぱいの顔がかわいいと思ったのは初めてだ。
智恵理は進んで前に出た。
「はじめまして」
尊敬の念をこめて頭を下げた。
おばあちゃんはニコニコしていた。
篝はまだ、大の字になって寝ていた。
おばあちゃんはそっと手を差し出して握手を求めてきた。
私たちは、それぞれおばあちゃんと握手をした。
その間も、篝は大の字なって寝ていた。
おばあちゃんにどこまで話しているんだろう。
気にはなったがこの状況で智恵理には聞けない。
紗綾だったらテレパシーで話せるんだけど。
篝を起こそうと肩を揺すった。
「ううううう」
篝が唸った。




つづく