玄関はごく普通だった。
神社と言うこともあってか、純和風の作りだった。
しばらくして、居間に通された。
正座は苦手だ。
篝は苦にもしていないし、紅愛と智恵理もケロッとしていた。
私だけか・・・・。
そこにはテレビなど電化製品はひとつも無かった。
まさかイマドキ・・・・。
と思いを廻らしているとパジャマ姿の紗綾が入ってきた。
ちょっとふらついている。
「うっ・・・・・」
・・・・何か違和感を覚える。
「ごめんね・・・・わざわざ来てくれて・・・・」
相当具合が悪いのか、声が擦れている。しんどそうだ。
「大丈夫?」
篝が心配して言う。
「うん、ありがとう」
紗綾にしては殊勝な態度だ。
(紗綾、ねえ紗綾)
心の中で呼びかけてみるが返事はない。
やっぱり、おかしい。変だ。
それに誰とも目を合そうとしない。俯いたまま。
こんなの紗綾じゃない。
ノー天気な明るさを持った紗綾じゃない。
(紗綾!どうしたの?)
呼びかけるが返事はない。
やっぱり、テレパシーって紗綾のスイッチが入ってないと通じないのか。
所詮、私はただの人間です。
篝は嬉しそうだった。ずっと笑顔のままの篝。
紅愛、智恵理も笑顔だった。当然、私も笑顔をするしかなかった。
ざっと二時間くらい話に盛り上がりをみせた。外はもう暗くなっていた。
街頭がちらりほらり点き始めていた。
神社の鳥居をくぐったとき紗綾の声がした。
(今日は、ありがとう。そして、ごめんね)
(紗綾、ねえ大丈夫なの?)
その心の声は届かなかった。

 家に帰ると悩んだときの安定剤であるお風呂に入った。
疲れというものが取れる気になるのは日本人だからでしょうか。
それとも今置かれている現実がそうおもわせるのでしょうか。
また、堂々巡りの妄想に近い記憶を廻らせてしまった。
息を止め湯船の中に潜ってみた。
一分五十秒ぐらいは潜れたとおもう。
胸が苦しかった。
呼吸が少し荒くなっていた。
やっぱり考えるのやめよう、とりあえず、最後に本当の紗綾の声が聞こえたし、
それでOKにしよう。
そうおもいまた湯船の中に潜った。




つづく