「図星みたい」
「霧島さん」
櫻田先生が小さく声を漏らした。
その時、急に職員室のドアが開き、これも予想していなかった人物が入ってきた。
「陽子ちゃん!帰ろうよ!」
篝である。
「あっ、いたいた。ねえ、帰ろうよ!」
先生たちのことはお構い無しだ。
「篝・・・・」
「先生、今日はもういいでしょ」
「ああっ・・・・」
「じゃ、失礼します」
篝は掴んだ腕を強引にひっぱり外へと連れ出してくれた。
一瞬の奪還作戦だ。
廊下に出るなり、
「なに、いじめられてたの?」
(これからいじめられるとこだったの)
「よくわからないんだよね」
「そう・・・・ならいんだけど」
「どうして?」
「智恵理ちゃんがね。教えてくれたの」
「智恵理が・・・・」
「そう、なんか大人に取り囲まれてるって」
それって仲間割れ?
それとも何か他に意図があって・・・・?
とりあえずは助かった。さすがにみんな篝には逆らえないみたいだ。
智恵理はそれがよく分かっている。
校門のところに智恵理と紅愛がいた。
「大丈夫だった」
紅愛が声をかけてくれた。
智恵理は黙っていた。
「ありがとう・・・・」
智恵理に言った。
智恵理は珍しく小さく頷いた。
背筋に悪寒が走った。振り向いたが、校舎には人影はなかった。
こんな日々がずっと続くのかと改めて思った。
その帰り道。
はじめてみんなで寄り道をした。ファミレスに入った。
なんかちょっとウキウキしてしまった。
それは篝も一緒だった。
「なににする?」
「ドリンクバー」
さくっと決めてしまう智恵理。
メニューをひとつひとつ確認しながら眺めている紅愛。
「お腹空いた!食べていい陽子ちゃん」
「どうぞ。って割り勘だから」
「じゃあねえ、ペペロンチーノとマルゲリータとシーザーサラダにドリンクバー」
「ちょっと待って」
慌てて店員を呼び注文をした。
他愛のない話をした。
誰もが篝に気を使ってのことだった。
何が引き金で超災害が起こるか分からないからだ。
ただ、笑っていられたら超災害は起こらないだろうと思った。
「はじまったばかりだけど、みんながんばろうね」
篝が急に語り始めた。
「なんか最近、これって意味があるように思えてきたの」
「意味・・・・?」
「ウン。演じることがすごく楽しいと思ったの。
でね、心がさ、なんかこうウズウズするっていうか・・・・」
「それ、なんとなく分かる」
智恵理が答えた。
ちょっと驚いた。
横で紅愛が頷いていた。

・・・・まさかみんな・・・・

・・・・・・・・・・演劇に・・・・・

・・・・・・目覚めた!

ということですか?

一瞬、眩暈を感じた。
こんなことが本当にあるのだろうか、
みんな本当の目的は違うはずなのに・・・・
これってもしかして、ミイラ取りがミイラになったってこと。
だから、智恵理は私のこと助けてくれたの。
なんてことを思っているうちに、話はドンドン盛り上がった。
そして、なんか結束が固まった。



つづく