物々しい警戒態勢で病院から移動した。
道路が全て封鎖されていた。
周りには車や人ひとりいなかった。
着いた所はごく普通のビルだった。
超未来的な建物を創造していたから、逆にビックリした。
しかし、それは表だけだった。
中に入り、乗ったエレベーターで地下三十三階まで下りた。
息苦しくなる感覚を覚えた。
そこは、まだTVでも映画でも見たことも無い機械が並んでいた。
ストレッチャーに乗せた篝を所定の場所にセッティングすると、
篝についているいろんな管を取り外した。
「さあ、陽子さんもここに」
愛葵が促した。
それはグニャグニャしたベッドだった。
横になるとグニャグニャしていたのが身体の重さで体形のまま沈んだ。
顔が沈む前でそれはとまり、固まった。
「愛葵さん、いろいろありがとう」
「わたしはなにも。それより紅愛をよろしくね」
「うん。紗綾は?」
「そう言えば・・・・」
紗綾が見当たらなかった。
愛葵たちは探してくれたが見つからなかった。
もう、一足先に帰ったのだろうと思った。
いつも、忍者みたいに消えては現れ、現れては消えしていたから。
「じゃ、篝さんをお願いします」
「はい」
顔にシールド貼った。目に刺激が強すぎるからだという。
スイッチが入った。
すっごく静かだった。こういう時ってそうとうな大きな音がするもだと思っていた。
強い光がシールドに当たっているのはわかった。
いろんな色を感じた。胃が窮屈になった。キリリッとした。
昼から何も口にしていなかった。
愛葵からNGがでていたからだ。
でも、さっきつまみ食いをしようとした。
愛葵お手製のクッキーだった。
戻ったら食べて欲しいとお土産をもらっていた。
それを食べようとした。
でも、我慢した。
正解だった。そんなことを考えている間に意識がなくなっていた。
 気がついたときには家の私の部屋にいた。
天井はいつもの何にも無いボードが張ったままの味気ない天井だった。
横には紅愛がいた。
「あれ?愛葵さん・・・・」
「紅愛よ」
「ああ、紅愛・・・・」
「もう、大丈夫よ」
「篝は?」
「篝さんもお家のほうに」
「そう・・・・」
紅愛から聞いた話だと、愛葵から連絡を貰った紅愛が
アクアの人達と転送先で待っていて、
送られてきた私と篝を人知れず家まで運んでくれたのだった。
因みに送られてきた場所に関しては教えてくれなかった。
「そうか・・・・あっ、篝はどうなの?」
「多分、もう大丈夫のはず。明日には元気になると思う」
「・・・・紗綾は・・・」
「見てないけど」
「そう・・・・」
紗綾のことだ、ケロッとして学校に現れるだろう。
などといろんなことを考える前にすることがあった。
「お風呂!」
紅愛が大声に驚いた。
布団を蹴飛ばし、紅愛を残して風呂場へと向かった。
“ザブーン”
お湯が溢れる。
「プハーーーーーーーーーーン」
入浴剤の山茶花の香りが心と身体に染み渡る気がした。
やっぱり日本人は湯船にお湯をはったこのスタイルが一番いい。
日本人で良かった。地球人で良かった。本当にそう思う。
サッパリ、スッキリして風呂から上がり部屋に戻ると紅愛の姿は無かった。
お礼言ってない!
気付くのが遅い。
窓を開けた。ちょっと欠けた月が見えていた。
「ありがとう」
お礼を言った。誰に届くともなく言ってみた。
本当に心が落ち着いた。
感謝の気持ちを持つと心が穏やかになるのがわかった。
ちょっと成長したみたいだ。


つづく