外は雲っていた。風は少し冷たかった。
どう見ても、自分たちの住んでいた場所となんら代わりのない風景がそこにあった。
病院の自販機でミルクティーを愛葵に奢ってもらった。ちょっと砂糖とミルクを増量した。
“甘い”
でもほっとした。身体が開放された気分だった。
「ねえ、ちょっと聞いていい?」
紗綾と愛葵が振り向いた。
「どうして、あんな虫が篝を・・・・どうやってここまで?」
「それは・・・・」
「それは、たぶんですね」
愛葵が話し始めた。
「あの虫に見えてたものはここ二十年くらい前に現れたテロリストです」
またすごい話になってきた。
「でも、戦争はなくなったんでしょ?」
「はい。この星では」
「この星?」
「そうです。あのテロリストは宇宙生物です」
「・・・宇宙生物・・・」
(分かってたの、紗綾?)
答えてくれない。
「今、篝さんはいろんな意味で重要人物です。
この、アクアに超災害を起こすためにはテロリストたちにとっては格好の人物」
「・・・・・」
「あのテロリストが知ってるってことは、いろんなところでバレてるってこと?」
「そのようです」
「じゃあ、篝はずっと狙われるってこと?」
「はい」
「じゃ、過去にあった人たちも狙われて・・・・」
「はい・・・・命を落とされた方もいらしたそうです」
「マジで・・・・」
「マジで」
突っ込めなかった。
命が狙われるって、私にはわからない。知りたくもない。
ただの、普通の高校生だぞ。
確かに、最近小・中・高の学校を襲う
わけの分からない人間が増えているよいうニュースを聞くが、
私の周りにはまだ無い。無かった。今までは。
ちょっと重いよ。もう、許容範囲は超えてるよ。
いっぱい、いっぱいだよ。まだ、そんなに成長してないよ。
「そうならないためにも、我々は紅愛をそちらの世界に送り込みました」
そうだった。
そして、智恵理や紗綾も現れたんだ。
「・・・・1ヵ月前に・・・・何も無かった時に・・・・戻ることはできないの?」
「無理です」
愛葵が即答した。


つづく