陽が昇るにはまだ時間がかかるみたいだ。空の星が煌いていた。
長い車に乗って学校に着いた。そこは、静まり返っていた。
部室棟に着いたとき、紗綾が言った。
「愛葵ちゃんたちはここまで、ここから先は陽子ちゃんしか行けない」
「えええええええええ、またひとり?」
「しょうがないよね」
「どうして?一緒に行こうよ」
「なに甘えてるの?」
「別に甘えてるわけじゃ・・・・」
「さあ、勇気を出して、がんばって」
笑った。紗綾が笑った。あの笑顔を私に向けた。
「がんばってください」
愛葵も、何も疑うことなく紗綾の後押しをした。
屈託ない笑顔がそこにもあった。
何なんだこの人たちは・・・・
愛葵がいろんな機械を取り付けようとしたが紗綾が止めた。
「必要ないよ。ねえ、陽子ちゃん」
「・・・・・・」
信じるって結構難しいものだと改めて感じる。
でも、今は信じるしかないのだ。

 夜の校内は気分が良いものではない。
廊下の電気のスイッチを入れると一気に明るくなった。
と、思ったら階段の電気はチラチラして気味が悪い。
一歩一歩足を運ぶ。途中で気付く。
何でこんな階段の踊り場に鏡があるのだろう。
今まで考えたことは無かった。
夜の学校で、いろんな幽霊話があるのはわかるような気がする。
自分の足音が校舎全体に響く。
恐怖を感じる。身体がすくんでしまう。
今度は呼吸している音が気になる。もうきりがない。
怖い思いを断ち切れないまま、やっと2階の部室前まで辿り着いた。
ドアに耳を押し付ける。中からは何も聞こえない。
そっと開けてみる。
暗くてよく分からない。右手だけを入れ、電気のスイッチを探す。
「確か・・・・この辺だったはず・・・・あった!」
スイッチを入れた。
一瞬で部屋が明るくなった。部屋を見回したが篝の姿は無かった。
来る前に紗綾が言ったことを思い出した。



つづく