そこは、誰がどう見ても中華料理屋だった。
シンプルな店構えの町の商店街にある場所だった。
「好きなもの頼んで」
愛葵はニコニコしていた。
当然、紗綾もだ。
事の次第を理解しているのだろうか?
ちょっと気になった。そして、酢豚を頼んだ。
 暫くして、料理が運ばれてきた。
紗綾は定番のチャーハンと餃子を、
愛葵はタンメンを私は酢豚と後から追加したご飯セットを食べた。
お腹が充たされたら眠気が襲ってきた。
ウトウトしていると紗綾と愛葵が何やらコソコソと話をはじめた。
最初は一生懸命聞き耳を立てていたが、あっという間に瞼がくっ付いていた。

 気がついたのは、それから数時間が経っていた。
紗綾いわく、簡単に言うと時差ぼけらしい。
むずかしい説明は勘弁してもらった。
フカフカのベッドに横たわっていた。
天井にはなにやら変な動物の絵が描かれていた。
じっと見ていると、その目に吸い込まれそうな感覚になった。
ドアのところに紗綾は立っていた。いつから居たのかはわからない。
「いい寝顔だったよ」
「うっ・・・・・・・」
相変わらずの笑顔だ。その笑顔の奥にどんな思惑があるのか全くわからない。
「深く考えることはないよ。今はね」
また、意味深な言葉を発した。
それから連れられたのは、テレビで見たNASAの管制塔みたいな部屋だった。
そこのモニターには街の映像が映し出されていた。
「なんか、全部見られているみたい・・・・」
「治安維持には仕方がないこと」
愛葵はそう言った。そう言えば、愛葵は服を着替えていた。
なんか軍服みたいなカッコをしている。
メガネまでして。萌え要素は十分に充たしていた。
「私たちの世界ではもう、戦争なんかないの。でも、犯罪は起こる。
それを、止めるためにはこれくらいのセキュリティは必要なのよ」
説明をしてくれた。でも、納得はいかなかった。
「どの世界も、人が考えることに正解はないよ。陽子ちゃん」
紗綾が言った。
多分、深い意味があるんだろうと思ったが、私には理解できなかった。
「さてと、それじゃ始めますか」
紗綾が言うと、愛葵たちが一斉にキーボードみたいな物に何か打ち込み始めた。
目の前の画面にいろんな街の画像が現れては消え、現れては消えした。
この装置には篝の生命振動をキャッチする能力があるらしい。
そして、マルチスクリーンに一つの建物が現れた。
「ここですね」
愛葵が言った。
「やっぱり・・・・」
その言葉に愛葵が紗綾を見た。
「分かってたんですか?」
「なんとなくだけど」
「じゃなぜ?」
「確証がほしかったの。ごめんね」
そこに映し出されていたのは、妻咲立女学館高等科部室棟だった。
「じゃ、行こうか」
「うん・・・・・」
さっぱり意味がわかんない。さっきまで居た場所じゃない。なんでまた?
「車を用意するわ」
愛葵の言葉に、
「お願い」
紗綾のいつもの笑顔だ。この笑顔に騙されるんだ。
(ひどいよ陽子ちゃん、騙されるなんて)
(だから、勝手に人の心を読むなって)
紗綾を見ると、やっぱり、満面の笑顔を向けてきた。



つづく