6時限目になり篝が姿を現した。
十分睡眠をとった顔は、腫れぼったく感じられた。
「よく寝たね」
頷く篝。やはりまだ声は出ないみたいだ。
篝がノートの端に文字を書き始めた。
“あんなに寝たのに、なんで声が出ないんだろう?”
「さあ・・・・?」
“昨日、そんなに大声出したっけ?”
「さあ・・・・?」
としか言いようが無かった。
篝、心配しなくても、紗綾が魔法のように
解決策を教えてくれるから・・・・などと言えるわけないし。
ふと見ると、篝がちょっと辛そうだった。
確かに篝がしゃべっていないことは今まで無かったと思う。
風邪を引いたときも、低音の天使とか言ってはしゃいでいた。
だからショックは大きいのかも知れない。
と、いうことは、もしかして超災害が起きているかもしれないってこと?
気になり、紅愛を見る。相変わらず、そ知らぬ顔。当たり前なんだけどね。
今は授業中だから。ここらへんが堅物っぽい感じを受けるところだ。
 授業というのは、時間が来れば、途中だろうが、なんだろうが終わる。
合図のチャイムが鳴る。
一斉にバタンバタンと本を閉じる音がする。暫くして、
担任がくる。サクッとホームルームを終わらせ、机を後ろに下げ、
掃除当番にあとを任せる。
篝を捕まえて、声を理由に家に帰す。
ブツブツと文句を言っていたが、
篝がいると紗綾から解決方法が聞けないし、
実行も出来ないからだ。
実行するのは、私なのだから。
篝が、一番気にしていた部活も個人練習という形にして納得させた。
帰り道。
篝はちょっと不機嫌だった。
声が出ないこと意外はどこも悪いとこがないからだ。
「病人扱いして!」
と怒っていた。たぶん。
声が出ないのでなんとなく雰囲気でわかった。
なだめて、なだめて、篝の家の中に押し込んだ。
おばさんへの挨拶もそこそこに、
自宅へ戻り、カバンを置いて学校に向かった。
「どこ行くの?」
母の声が聞こえた。
「忘れ物!」
とだけ言った。

つづく