“幼馴染”を真剣に考えたことはなかった。
篝とは生まれたときからずっと一緒で横にいるのが当たり前だった。
記憶のある幼稚園からのことを考えると、いつも篝に振り回されていた。
問題をすぐ作ってくるが解決したためしがない。
だが、嫌われる性格ではないし、逆に、誰からも好かれるほうだ。
幼稚園から小学校までは必ず手をつないで歩いていた。
それも当たり前だった。
初恋は篝が先だった。
幼稚園の年少組のとき、
同じ班に小村一志君という一見ボ―っとしている男の子のことが
好きなったことがある。
篝はちょっかいをだすがエスカレートして
何度も一志君を泣かした。
それが原因でかは知らないが、3ヶ月目で引っ越していった。
それがたぶん篝のトラウマになっているのかもしれないが、
恋愛話はそれっきり聞かない。
気に入らないから苛めてくるっていうのは日常だったけど。
小学、中学のときは、兎に角じっとしていることが無かった。
自由にしていた。それは今も変わらないけど。
高校は篝が決めた。
電車通学を夢見ていた私だが、篝が離れたくないと、私の両親を口説き、
みんなして私を、この妻咲立女学館に押し入れた。
ちなみに、篝がこの学校にした理由は、近いからということだけだった。
それに、今思うと不思議なことがある。
篝は高校に入るなり、演劇部に入部した。
でも、私を誘わなかった。
いつも、何かするたびに、私を巻き込んできた篝が、
演劇部に関してはなにも言わなかった。
相談もなかった。
篝の中でなにか変化があったのかもしれない。
その変化が、もしかして、今のこの状態を生んだのかもしれない。
篝に変化をもたらしたものがあるなら、それがなにか知りたいと思った。



つづく