あれから、2日3日と時間は過ぎたが、紅愛や智恵理から超災害情報はなく、
無事に日々を過ごせていた。篝に降りかかる災いも鳴りを潜めている。
こんな日々がいい。
それに、演劇もちょっと楽しく思えてきた。でもまだ、基礎編しか行っていないけど。
さらに不思議だったのは。紅愛や智恵理、紗綾もみんな一生懸命に練習をしていることだった。
彼女たちは、ここにいる目的が違うはずなのに誰も手を抜いていない。
なにげに高校生活をエンジョイしているのかもしれない。みんな自然と笑顔が溢れていた。
「紗綾、結構うまいじゃない」
「あたりまえでしょ」
紗綾はなんでもこなした。
紅愛は、発声はいいが動きがぎこちない。
智恵理は、動きはいいのだが発声がもうひとつだった。
私・・・・・霧島陽子はすべてにおいて、もうひとつでした。
「陽子ちゃん、特訓ね」
篝は冷静に言った。
「ええええええええ」
「仕方ないじゃない。それじゃぁねえ」
また、紗綾の上から目線だ。
「出来ないのだから、できるようになってもらわないと」
「そうね。セリフを間違えられるのは困る」
紅愛が言った。
「セリフたって、犬だよ、私の役は・・・・」
「犬だろうがなんだろうが、書いてある言葉を間違えたらイカンのだよ。陽子ちゃん」
紗綾がかぶせてきた。
「・・・・」
智恵理は黙っていた。
「いい感じだね。うちの部は」
「どこがあああああああああ」
叫んでみたが、紗綾がまた声を止めた。そして、久しぶりのテレパシーだ。
(ちょっと、黙ってて)
(なんで?)
(篝ちゃんには、気持ちよくなっていてほしいから)
(そんなああああああ)
(なにかあったら、このふたりに起こられるわよ)
と紅愛と智恵理を見る。ニコニコしている。
   疑問。
  なぜ私だけが我慢をしなければならないのか?
  紗綾の回答。
  「霧島陽子だから」
  紅愛の回答。
  「日向篝とずっと一緒だから」
  智恵理の回答。
  「あなたが守るしかない」
  多分、こんなことだろうと創造する。
  私には解けない問題だ。
  
  
  「あ、え、い、う、え、お、あ、お」
  「か、け、き、く、け、こ、か、こ」
  篝との練習だ。
  夜間特訓1。
  自宅練習。
  なぜか夕食のあと篝に呼び出され、稽古が始まった。
  「大分よくなったね」
  「そう、ありがとう」
  「陽子ちゃんも演劇好きだったんだね」
  「そういうわけでもないけど・・・・」
  「だって、がんばってるじゃん」
  (しょうがないでしょ。成りゆきなんだから)
  と心の中で答えた。
  「まあね」
  返事する。
  「久しぶりに楽しいよ。去年はこんなことしてなかったからね」
  「ほぼ、休部状態だったからでしょ」
  「だって、部員いなかったし」
  「もともとはなんとなく入った部だったし」
  「ええええええええええええ、そうなの?」
  「あれ?言ってなかったっけ」
  「聞いてない」
  「ハッハッハッハッ」
  笑って誤魔化された感じだ。
  「いつもありがとうね。陽子ちゃん」
  「なに、気持ち悪い」
  「感謝してるんだよ。いつも」
  「それはどうも」
  充実感があった。
つづく