帰り道。
「ねえ、陽子ちゃん?」
「なに?」
「調べたいことがあるから、市立図書館に行ってくる」
何か不安になり、
「私も行く」
「えっ、本当?」
「いいじゃない。二人で行こ」
篝は嬉しそうだった。


 駅前の市役所通りに私立図書館はあった。
篝は、演劇演習本を5冊まとめて取り上げ席に着いた。
「ねえ、いまさら何を勉強するの?」
「演劇の練習の仕方知らないの」
「えええええ。でも、そういう本って学校にあるんじゃないの?」
「無いのよ。うちの部はなんにも」
「本、いっぱいあったよ」
「シナリオとかわね」
篝が真剣に書き写している。学校では見られないシーンだ。
手持ち無沙汰になったので、本を見て回ることにした。
目につくのは、超能力、テレパシー、超常現象、パラレルワールドなど最近よく聞く言葉だった。
手に取り眺めてみる。棚横の椅子が空いたので座って読んだ。
難しい漢字や、言い回しなどが多くて、理解するのに結構手間取った。
作家の方々は、もっと分かりやすく伝える方法を考えるべきだと思う。取説を書いている人もね。
あまりにも難しいので、眠気が襲ってきた。ウトウトしていると、悲鳴が聞こえた。
「キャー」
篝の声だった。
ビックリした。慌てて篝の元へ。
そこには、篝の右手の指の間に、カッターナイフが突き刺さっていた。
「どうしたの?」
「急に、これが落ちてきて・・・・」
「・・・・」
上を見てから、あたりを見回したが怪しい人物などはいなかった。
そっと、カッターナイフを抜いた。
篝はビックリしたまま固まっていた。これが、篝に降りかかる災い。
智恵理の言っていたことが・・・・マジで起きた。
緊張した。
図書館の職員の人が来て話をしたが、上から落ちてきたことは信じてもらえなかった。


 図書館からの帰り道。結構後ろを気にしながら歩いた。
「なんか、映画みたいだね」
今では、この状況を楽しんでいる篝だった。この切り替えはどうしたら出来るのだろうと考えてしまう。
やっぱり、もう観念して受け入れるしかないのだろうか。すべてを・・・・。

つづく