私は篝を探すことにした。
部室、食堂、購買部を回ったがどこにもいなかった。
校庭から校舎を見上げた。屋上に篝がいた。
篝は先に気付き大きく手を振っていたのだ。
元気だ。人がこんなに心配しているのに・・・・。
とは私の事情だ。
屋上に上がると篝は大の字になって寝転んでいた。
「なにやってんの?」
「別に・・・・気持ちいいよ。陽子ちゃんもやってみなよ」
篝の横に座る。
同じように空を見上げた。
雲が流れていた。
「流れが速いね」
「雲ってどこからきてどこへ行くんだろうね?」
「さあ・・・・」
「風に乗れるって、雲の特権だよね」
「そうだね」
「何、考えてるんだろうね?」
「さあ・・・・何にも考えてないんだよ」
「どうして?」
「自然にまかせてるから」
「うーん」
「なにうなってんの?」
「陽子ちゃんがすべて知ってるみたいだから」
「なんにも知らないよ」
「そうかな・・・・」
「神様じゃないし、宇宙人でもないよ」
「ええええええ」
「私にも色々あるの・・・・」
「そうか・・・・」
ここで納得するのが篝だ。
今の、この状態が心地いいと思った。


 放課後。
〆のホームルームの時には、篝の姿は無かった。
帰り支度をして、あたりを見回す。これまた誰もいない。
仕方なく、一人で部室へ向かった。
部室には紅愛がいた。
「熊野さんだけ?」
「ええ、まだ誰も・・・・」
やばい、初めてのふたりっきりだ。
しばらく沈黙があった。そして紅愛が話し始めた。
「霧島さんはどうして演劇部に?」
「えっ、無理やり」
「無理やりですか?」
「ええ、篝に・・・・熊野さんと春日さんが来る前日に・・・・」
「ええっ、そうなんですか・・・」
「うん。だからキャリアゼロ」
「面白くですね」
「えっ?」
「あれ、私何か変なこと言いました?」
「うん」
「たまにでるんですよ。気にしないで下さい」
「ひとつ聞いてもいいかな?」
「なんですか?」
「あなたは誰?」
「・・・・」
少し黙ってから、掛けていたメガネをはずし語り始めた。
雰囲気が変わった。
「深くかかわり始めたんですね」
「好きで関わってるんじゃないわ」
「それも必然。かもしれません」
「春日さんと同じ日に転校してきたから、てっきりお仲間かと思ったんだけど、違うみたいね」
「まあ、目的は近いですけど」
「同じじゃないってこと?」
「若干・・・・」
「あなたはどういう機関の人かしら・・・・?」
「私は・・・・アクアの人間です」
「アクア・・・・パラレルワールドの・・・・?」
「はい」
「えええええええええええええええ」
「そんなに驚かなくても」
「嘘だ」
「どうして?」
「信じられないもん。だって私たちと変わんないじゃない」
「別に、怪物じゃないですから」
「変な道具とか持ってないの?」
「SFの見過ぎです」
「そう・・・・でも科学力はすごく進歩してるんでしょ?」
「まあ」
「じゃ、目的はなに?」
そのとき、ドアが開かれ篝が入ってきた。
「御免。おそくなっちゃった。あれこれだけ?」
「うん」
「陽子ちゃん、ふたりで、ちょっと探してきてくれない」
「わかった」
紅愛と教室を出た。
「霧島さん、今夜会えるかな」
「うん。いいよ」
約束して二手に分かれた。


つづく