篝たちと正門から出た。
15分のタイムロスがあるが、少しでもこの人たちと一緒にいなければと思った。何が起こるか分からないからだ。
しかし、何事もなく線路そばのバス停で解散した。
篝の家は、私の家の隣なのでいつも一緒に帰っていた。
学校も、同じクラスにならなかったのは小学3・4年生のときだけだった。
だが篝は毎日、私のクラスで授業を受けていた。
紗綾は言った。
“どうして日向篝と生まれたときからずっと一緒だったか、なんとなくわかるね”
意味があるってこと。私と篝が生まれたことに、ずっと一緒だということに意味があるってこと。
「ねえ、どうしたの?」
篝が心配して声を掛けてくれた。
「うん・・・・なんにもないよ。大丈夫だよ」
(うわっ、声が出る)
「今日の陽子ちゃん、ちょっと変だったよ」
「えっ・・・・変?」
「うん。なんか難しい顔して、ずっと考え事して、全然話さないし」
「そうかな」
(話さなかった、じゃなくて、声が出なくて話せなかっただけ)
「心配事があるんだったら、なんでも相談にのるよ」
「ええ、そのときは頼むわ」
今日、起こったこと話しても信じないでしょ。それに、今まで篝に相談されたことはあっても相談したことは一度もない。相談しようと思ったことは何回かあるけど、気がつけば篝の話になっていた。
ここは早く分かれて、今日一日起きたことを整理しないと、本当に頭の中がクラッシュしてしまいそうだ。


 お風呂というのは、本当に考え事をする場所としては最高だと思う。
邪魔も入らず、ただお湯に浸かって湯気を吸い込み、リラックスする。それだけなのに、心も体もリフレッシュできる。
さっぱりした。
そして、現実を受け入れる準備が出来た。
今日起こったことは、現実離れした出来事だった。
朝から順番に整理する。
そこでキーワードを見つけた。
あの台本だ。
『虹色の羽根』
紗綾が言った。
「これが、あの本なのね・・・・」と。
その時、紅愛と智恵理の表情が険しくなった。
覚えている。
紗綾たちは台本のことを知っている。
間違いない。
持ち帰った台本を開いた。
暗号になっているとか怪しいところはない。
といっても、スパイではないし、マンガに出てくる名探偵でもないので、どこまで解明できたかは些か疑問である。
あとは転校生と謎の少女だ。
紗綾に関して出た結論は、普通の人間ではないということだけだった。
多分、超能力者か宇宙人ではないかと思える。
まさか、神様?だからすべてを知っている・・・?
などと考えていると、時計の針が午前3時を指していた。
今ならグッスリ眠れる。
ベッドの中に潜り込んだ。
ものの2分で夢の中に入ることが出来た。

つづく