“ゴウ― ”
物凄い音と揺れを感じた。
一部のビルが倒壊し、人々は逃げ惑っていた。
日本国公安秘密諜報省監視局第一管理室は騒然となった。
「震源地は?」
「・・・・九州国南部5キロ、直下型ですが・・・」
「なんだ?」
「普通の地震とは違うみたいです」
「地形反応が0なんです」
「ばかな・・・」
しかし、どの震度計を見ても揺れはなかった。
「・・・・まさか・・・シンクロゲージは・・・」
「微弱ですが・・・3%上昇しています」
「ラビットゲージは・・・・」
「20%上昇」
「そんなばかな・・・」
一瞬にして静まりかえった。
管理員の男は頭を抱えた。
「連邦委員会に連絡を・・・シグナルイエロー・・・」


 空にはどんよりとした雲がかかっていた。
「暗っ!」
気が滅入る。
誰かが言っていた。
“今、自分に起こっていることは、すべて自分が招いたこと”だと
・・・・マジで・・・
空を見上げた。
この天気も私のせいなの・・・・・
ああーっ気が滅入る。
こうとも言っていた。
“今あるもの全てを受け入れろ!”と。
何かよくわかんない。
私、霧島陽子。今日から高校2年になりました。


 我々が暮らす妻咲立市妻咲立町は、妻咲立女学館と共に発展してきた。
学校は俗に言う、幼稚園から大学までの一貫校だ。
そして、我が妻咲立女学館はあの山の上にある。
学校への道のりは、ちょっとした運動になる。
憧れていた電車通学は、親の一言とあいつ(後ほど紹介するが)のせいで駄目になり、望んでいなかった歩き通学となった。
それも徒歩15分という、人に言わせれば天国ばりの立地条件らしいのだが・・・。
5分ほどすると心臓破りの階段がある。ここを避けると約10分のタイムロスが生じる。もうそろそろ慣れてもいいのだがまだ無理みたい。ていうか、もう無理だろう。1年経っているのだから。汗がじわりと出る。春なのに。
階段を上りきると平坦の道が3分続く。そして最後の難関。獣道だ。
ここを通ることによって15分という最高の通学時間を確保することが出来るのだ。
裏門から入ると、右手に体育館がありその奥に部室棟。
さらに奥にあるのが我が学び舎のある棟だ。
2階の左から2つ目が我が教室。
心臓破りの階段と獣道を通っての、この階段はちょっと辛い。
きっと卒業するときには、今まで誰も見たことのない太い足になっていることだろう。絶対に。
私が教室に入るのは、授業開始のチャイムがなるまであと1分。
窓側の後ろから3番目が私の席だ。
一人を除いてほぼ全員が来ている。
チャイムが鳴る。
廊下をドタドタと走ってくる音がする。
来た、あいつだ!
「廊下を走るな!」
担任の出雲一輝先生の声がする。
ドアが開かれる。
息を切らしたあいつがそこにいる。
“日向篝 ”
私の幼馴染で、生まれたときからずっと一緒だ。
「間に合った・・・」
「毎日毎日、懲りないねえ」
と出雲に頭を小突かれる。
この光景は、ほぼ毎日繰り返されている。
席に着くなり、
「陽子ちゃん・・・」
付け加えておくが、当然隣の席である。
「陽子ちゃん、どうして起こしてくれなかったの?」
「起こしたわよ」
「ええっ・・・・」
これも毎日のお決まりごと。
こうもノー天気に毎日を送れるってどういうことなんだろうって、たまに思うことがある。
それにこの屈託のない笑顔を見ていると。
朝の曇り空なんかどうでもいいことのように思えてくる。
篝の家とは隣同士で、生まれた病院まで同じという血統書つきの幼馴染である。
そしてこの学校も篝の謀略により通うことになったのだ。

つづく