”人が消えた!”
それは以前から噂になっていた場所だった。
西棟は三階までしかないのに、階段はさらに上まで続いていた。
ドアもなく、なんのために作られたかわ分かっていない。
話によると、1年の女子生徒がその階段を上がっていき消えたというのだ。
早速話に飛びついたのは水口陽子だった。
「あそこは前から気になっていたの・・・いいチャンスがやってきたわ。
謎が解決するかもしれない」
相変わらず前向きな発言だ。
「じゃ、行ってみましょうかね」
さらに前向きな糸井繁美がここにいた。
私は、この前向きな人たちが好きになっていた。
さっと立ち上がったかと思うとさっと部室を出ていく。
行動の速さは天下一品だ。勝てると言う人は居ないと思う。
いるならなるべく早いうちに手を上げて欲しいお願いします。

部室から西棟までは5分と掛からなかった。
生徒会の井口が立入禁止のテープを張り巡らしていたが、
そんなことは関係ないとばかりに部長は中に入ろうとした。
「ち、ちょっと、ダメよ、入っちゃ」
静止する生徒会の井口。
「どうして?」
「どうしても?」
「理由にもならないわね」
さらに進もうとする水口陽子。
「だめだったらダメです」
「私たちはちゃんとした調査に行くのです。あなたに止める資格はないわ」
「私は生徒会の・・・」
「私たちは、第二霊能部です。文句はないはずですよ」
「・・・」
と言い切って中に入っていく。
凄い威圧感だ。威厳に満ちている。
私たちも水口陽子のあとに続いた。

階段はどこからどう見ても普通の学校の階段たっだ。
階段を上っていくと段々と天井が迫ってきて最後まで上がることはできなかった。
手を伸ばして逃げ道がないか探してみたがそれらしい仕掛けはなかった。
「怪しいところはないわね」
「そうね・・・」
「どうして人が消えたのかしら・・・?」
「昔からこの場所にはいわくはないの・・・」
「じゃ、どうして?」
「だから今まで解決できなかったのよ」
「なるほど・・・」
迂闊にも頷いてしまった。
「でも、今回はもしかして・・・・」
水口陽子の顔にはうっすらと笑がこぼれていた。
「何から手を付けていいか分からないですね」
「まず、居なくなった女子生徒の素性をあらって、そしてそれを目撃した生徒の素性もね」
「私は何をすればいいですか?」
「今、言ったじゃない」
「えっ・・・私に言ったんですか・・・?」
「だって何していいか分からないって聞いたじゃないの」
「そこですか・・・」
討論しても勝ち目はないので、さっさと調べることにした。

意外と簡単に調べることは出来たが、
私にはこれが解決するキッカケになるとは思ってもみなかった。

調査結果は以下の通り。
居なくなったのは一年生の岳山芙美子さんでゴクゴク普通の
家庭で育った一人娘で箱入り娘ではなかった。
目撃したのは同じ一年の立木まひるでこちらも
ひっかかるようなものはなかった。私の目には・・・。
報告を聞いた水口陽子は目をキラっとさせ言った。
「なるほど・・・」
糸井繁美も同じ反応を示した。
共通点を見つけたというのだ。
それはゴクゴク小さなものだった。
共通点というより歴史のある学校ならありえることだろうと私は思った。
しかし水口陽子たちはそこに注目した。
それは両方の母親がこの学校出身者というところだった。
水口陽子に言われるまま母親のことを調べると一つ違いの先輩後輩の間柄だった。
「ビンゴね」
大きく頷く水口陽子たちをよそに、
この時点でも私にはなんのことかさっぱり分からなかった。

そんな時、居なくなっていた岳山芙美子が三キロ離れた学園内の林の中で発見された。
本人には外傷もなく至って健康だった。
しかし、消えてから今までの記憶が無かった。

二日目の午後。
水口陽子は謎が解明したと言った。
「どうして岳山さんは林の中にいたんでしょうかね・・・」
「普通に考えればテレポーテーションね」
それが普通の考えとは私は思えなかった。
「しかし・・・今回は、違うわね」
「テレポーテーションじゃないって事ですか?」
「たぶん・・・」
「どうしてなんですか?」
「それは・・・これよ」
と一枚の写真を取り出した。古い写真だった。
そこに映っていたのは二人の女生徒だった。
「誰ですか?」
「それは居なくなった岳山さんのお母さんと目撃者の立木さんのお母さんよ」
「え・・・」
「とても仲良しなんですって」
「・・・もしかして、今でもその関係は続いている・・・」
「そうなのよ」
「と、言うことは・・・」
「岳山さんと立木さんは顔見知りだってこと・・・」
「ええええ、本当ですか?」
「たぶん」
そこに岳山芙美子と立木まひるが水野真澄に連れられてくる。
「いいところに来たわ・・・・」
水口陽子はふたりを目の前の椅子に座るよう促した。
「率直に聞くけど・・・」
ふたりは緊張していた。私もなぜか緊張した。
「今回はふたりの・・・」
私はつばを飲み込んだ。
「ふたりの狂言よねっ!」
「えっ・・・?」
「どうしてこんな事したの?」
水口陽子は狂言だと完全に決め付けていた。
「・・・すみませんでした・・・」
あっさりと認めた。
話はこうだ。
ふたりは小さい頃からの友達だった。
しかし、他に友達が出来なかった。
高校生になったふたりは新しく友達を作る為、この狂言を思いついたのだ。
「でも、どうして狂言だとわかったんですか?」
「それは・・・」
「それは・・?」
「秘密・・・」
「って・・・マジですか?」
「ちょっと考えれば分る事よ。あなたもまだまだ修業が足りないわね」
「・・・確かに、そうかもしれない・・・けど・・・」
水口陽子たちは清々しい顔をしていた。
その後、岳山さんと立木さんは友達がたくさん出来ました。
裏で糸を引いていたのが水口陽子だということを後から聞かされました。
また、水口陽子の謎解きですが、少しだけヒントをくれました。
「いわくってなぜあるか分る・・・?」
これがヒントだそうです。
私にはまだよくわかりません。